あなたの周りに、行き詰って立ち止まっている人はいませんか?部下や同僚など、気になっていて何とかしてあげたいけど、どうアプローチしたら良いかわからないという場合もあると思います。
そこでこの記事では、周りの人が仕事で行き詰ったとき、確実に行動するためにできるアプローチの方法を4つのステップに分けて說明します。
各ステップで行うアプローチは、実際にコーチングで行っている、相手が行動するための連続したアプローチになっています。したがって、どの状況で行き詰っている場合でも、ひとつづつステップを踏むことによって確実に行動できるまでフォローできるようになっています。
よりリアリティが感じられるよう、ストーリー仕立てで進めていきます。
プロローグ
浜利(はまり)さんは、現在53歳。昨年9月に転職してあなたの部署に配属された、年上の部下にあたる人です。真面目な性格で仕事ぶりもなかなかのものですが、時代の流れで今までやってきた仕事のやり方が通用しなくなりつつあり、現在担当している仕事で行き詰っています。
上司であるあなたは、年長者の浜利さんのプライドを傷つけることなく、浜利さん自身が気づいて行動してくれるようにアプローチすることで、現状を打破したいと考えています。
ステップ1:選択肢がひとつしか見えず、ハマっている
ある日、あなたが浜利さんから話を聞いてみると、今取り掛かっている仕事Aをこなすことでいっぱいいっぱいになっていて、下の図のような状態になっていることがわかりました。
浜利さんは現状が行き詰っていると感じているあまり、選択肢Aしか見えていないようでしたが、あなたはすぐに他の選択肢B・C・Dがあることに気づきました。
これは選択肢がひとつしか見えず、ハマっている状態です。
行き詰っているときは視野が狭くなっていて、目の前のことしか見えていない場合がほとんどです。端から見ると他の選択肢は沢山あるように感じますが、本人は選択肢が復数あることに気づいていないのです。「見ていても見えていない」状態であるとも言えます。
アプローチ1:視点を変えて他の選択肢が見えるように促す
このような場合には、視点を変えて他の選択肢が見えるように促すアプローチが効果的です。どうするかというと、視点を変えるための質問を投げかけます。
そこで、あなたは浜利さんに「Aが達成できたら、何が見えますか?」と質問しました。すると、浜利さんは少し考えたあと「B・C・Dが見えます」と答えました。
図では質問の例として、「Aが達成できたら、何が見えますか?」としていますが、他にも「俯瞰すると周りに何が見えますか?」「一歩引いてみるとどう見えますか?」など、視点を変えるように促すアプローチをすることによって、他の選択肢が見えてきます。
なお、自由の森ではスマートフォンで使える「視点変更ツール(+コーチングでよく使う質問集)」を無料公開していますので、ぜひご利用ください。
ステップ2:他の選択肢が見えたが、どうすれば良いかわからない
シメた!と思ったあなたは「A・B・C・Dの4つの選択肢が見えてきましたが、どれをやりましょうか?」と聞いてみました。浜利さんは「4つもあるので、何をどうやったら良いかわかりません」と言いました。「なん…だと…!?」
他の選択肢が見えたけど、どうすれば良いかわからない状態です。
これは、急に選択肢が増えたことで混乱してしまうことで起こりやすくなります。例えば、ひとつのメニューしかない牛丼屋ではすぐに決められるのに、ハンバーガーを買うときにはメニューが多くて、何を食べるか決められなくなる場合と似ています。
それでは下の図をご覧ください。
アプローチ2:各選択肢を明確にイメージし、スケールや難易度を見える化
このような場合には、それぞれの選択肢を明確にイメージして、スケールや難易度を見える化(可視化)するアプローチが有効です。ここでのスケールと難易度は下のとおりです。
- スケール:期間・予算・人数などの数的な指標(外的指標)
- 難易度:知識・経験・技術などの本人の能力に基づく指標(内的指標)
あなたは「A・B・C・Dそれぞれについて明確にイメージして、期間・予算と難易度を見える化ししたいと思いますが、いかがですか?」と問いかけました。浜利さんは「わかりました。そうですね…」と答えて、この後A・B・C・Dそれぞれについて期間・予算などが具体的になりました。さらに、あなたは浜利さんの経験や能力を考慮して、難易度を5段階で評価しました。
このようにスケールや難易度を明確にすることによって、それぞれの選択肢がリアリティを持ち、立体的なイメージとして明確に浮かび上がってきます。なお、難易度については相手の能力がわかっている場合、一緒に考えても問題ありません。ポイントは外的・内的両方の指標を抑えることです。
ここまでのことは、慣れた人なら相手に提示することも可能だと思います。したがって、ここから先が実際に行動するか否かを左右する重要な分かれ目です。
ステップ3:選択肢が明確になるが、選ぶことができない
ここまで選択肢が明確になればあとは選ぶだけ、と思ったあなたは「A・B・C・Dのスケールと難易度がそれぞれ明確になりましたね。さて、どれをやりましょう?」と聞いたところ、浜利さんは「う~ん、そうなんですけど、どれをやったら良いかわかりません…」と言いました。「なんと!?」
選択肢が客観的には明確になっているが、どれを選んだら良いかわからない状態です。
これは、対象(選択肢)を客観的に見すぎていてることによって、自分のこととして捉えきれていないことから起こります。例えば、海外のあちこちで武力衝突が起きているニュースを知ったとします。現実だけど遠い国の出来事であって、自分にはあまり関係ないことだと思ってしまい、何とかしたいとは思ってはいるが、どうしたら良いかわからない状況と同じような感覚だと言えます。
アプローチ3:ゴールをイメージして、成果や感情の大きさで選択を促す
このような場合は、それぞれの選択肢でゴールをイメージして、得られる成果や感情の大きさを明確にして選択を促すことで、どうしたら良いかはっきりします。
あなたは浜利さんに「A・B・C・Dを達成した場合、それぞれについて得られる成果と、浜利さん自身のやる気(感情)を数値化して点数を付けていきたいと思いますが、いかがでしょうか?」と提案しました。「ぜひお願いします」と浜利さんは答えました。
下の図を見てみましょう。
浜利さんに、ひとつづつ得られる成果とやる気について聞いた結果、Cを達成したときの点数が1番高いことがわかりました。どうやら浜利さんは、困難なことにチャレンジすることに対してやる気が出るようです。そこでさらに、「Cが1番点数が高い結果となりました。この結果を踏まえてどうしましょうか?」と聞いてみたところ「もちろんCをやります!」と元気よく返事がきました。
このように、相手が得られる成果(メリット)と感情(主観)をセットでフォローすることによって主体性が生まれ、どうしたら良いか選択することができるようになります。
ステップ4:目標が大きく、ゴールが遠すぎて行動が起こせない
話をした次の日の午後、浜利さんの様子を見ていると、どうやら何も進めておらず途方に暮れているようです。慌てて浜利さんに話を聞いてみると「目標が大きく、やることも沢山ありそうなので、何から手を付けたら良いかわからない」ということでした。「なんじゃとて!?」
目標が大きく、ゴールが遠すぎて最初の行動を起こすことができない状態です。
これは、目標とゴールしか見えていないため、プロセスをイメージできていないことから起こります。例えるなら、旅をしたくなって行き先と目的は決まっているものの、行き方や準備するものがわからず、結局何もできずにいることと似ています。
それでは下の図を見てください。
アプローチ4:プロセスを細分化し、実行可能な小さな一歩を決める
このような場合どうしたら良いかというと、ゴールまでのプロセスを細分化し、実行可能な小さな一歩を決めることで、確実に行動に移すことができます。
そこで、あなたは浜利さんに「ゴールまでのプロセスを年単位、月単位、週単位として見ていきましょう。その中で、最初のプロセスで一番はじめにできる小さな一歩は何ですか?」と聞いてみました。すると、浜利さんはしばらく考えたあと「まず最初のプロセスは、人を集めることです。一番はじめにできることは、メールで呼びかけることですね」と答えました。
これは図の中で、はしごを掛けることに当たります。また、はしごの段を増やしてプロセスを細かくしていくと、登りやすくなるのでよりスムーズに次の段階に進むことができます。したがって、はしごを掛けることによって一段づつ進むことができ、結果として確実にゴールに辿り着くことができるのです。
エピローグ
あなたは続けて「いつやりますか?」と聞いたところ、「このお話が終わったらすぐにやります!」と浜利さんは言いました。「それではすぐに取り掛かってください。よろしくお願いします!」「はい!」
それから1年後、浜利さんの立ち上げたプロジェクトが顧客のニーズにどハマりして、過去最大の業績を上げることができました。浜利さんはもちろん、上司であるあなたの評価もうなぎのぼりで、次のボーナスが楽しみです。お祝いにあなたは浜利さんを誘って、銀座へ寿司を食べに行きました。
めでたしめでたし。
まとめ
いかがでしたか?4つのステップでアプローチを行うことで、行き詰まりから抜け出して確実に行動することができます。
この記事を参考にして、ぜひ周りの人をサポートして頂けると嬉しいです。
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