「アイデア大全」に引き続き、読書猿さんの「問題解決大全」を読みました。アイデア大全と同様に、問題解決についてのツールが37種類詰め込まれていて、仕事で活かせるのはもちろんのこと、コーチングにも応用できる内容でした。
この記事では、概要を示すとともに、コーチングでどのように活かすかに加えて、読んでいく中で得られた見解について説明します。
あらゆる分野を横断した問題解決の総まとめ
著者の読書猿さんはその名から想像できるように、とてつもない量の本を読んでいる方で、古今東西のあらゆる分野から問題解決についての知見を網羅しています。
まえがきを読むだけでも、「問題解決とは何か」という哲学的な視点から、様々な知見が得られる充実した内容で、アイデア大全と同様に読み物としても圧倒的に面白いです。
肝心のツールはレシピとサンプル、レビューで構成され、まずは方法と使用例が示され、やり方を掴んでから解説が入るので、理解しやすくなっています。
この本のツールを熟知して自在に使いこなすことができれば、ありとあらゆる問題に対処できるでしょう。特に仕事では行き詰まったときなどに効果を発揮すると思います。なぜなら、仕事とは突き詰めると「問題解決を行う一連のタスクの積み重ね」なので、問題解決のツールを使いこなせれば確実にやり遂げることができるからです。
リニアな問題解決とサーキュラーな問題解決
本書では、問題解決の種類を「リニアな問題解決」と「サーキュラーな問題解決」の2つに大きく分けています。()内は私の独自解釈による補足です。
- リニアな問題解決:直線的因果性で問題を目標と現状のギャップと捉え、問題の外に問題解決者が位置する(客観的:対象が物事に関わる)
- サーキュラーな問題解決:円環的因果性で問題と偽解決の悪循環を断ち切ることが重要とし、問題の内に問題解決者が位置する(主観的:対象が人に関わる)
問題解決の種類をこのように定義することによって、客観視して原因に対処すれば解決可能な問題と、長期間続いている悩みなどにありがちな、どこかで起きているループを組み換えることで解決する問題に切り分け、問題の構造を見極めて対処しやすいようにしています。
問題解決のステップごとにツールを配置
本書では、問題解決のステップごとにツールが配置されています。それぞれのステップにひとつ以上のツールがあり、問題を解決するプロセスで段階的に活用することができます。各ステップを下に示しますが、これだけでもかなり有用です。
問題の認知
- 目標設定
- 問題察知
- 問題提議
- 問題理解
解決策の探求
- 情報収集
- 解の探索
- 解決策の改良
- 解決策の選択
解決策の実行
- 結果予測
- 実行計画
- 進行管理
結果の吟味
- 結果の検証
- 反省分析
- 学習・知識化
コーチングへの応用と考察
コーチングは対話を通じて問題解決や悩みの解消を促す手法ですが、クライアントが持つ問題や悩みは、話を聴いていくと「そうしたいけど、〇〇だし…でも本当はそうしたいってわかっているけど…」というように、本書における因果ループに陥っている場合があります。
このような場合、因果ループを抜け出すアプローチを行うことで、問題や悩みに対処して行動を変えられるようにサポートします。したがってコーチングでは、サーキュラーな問題解決を行うためのアプローチが大きな役割を果たします。
本書で挙げられている、リフレーミングやスケーリング・クエスチョン、二重傾聴などは、そのまま実際にコーチングでも使っていますし、ミラクル・クエスチョンは形を変えていますが、同じようなアプローチを行っています。
コーチングのアプローチを通じて、思い込みやセルフイメージを変えることで、未来への一歩を踏み出すことができるようになりますが、本書を読んでいく中で、因果ループを断ち切って再構成すること、つまり適切に認知を変えることができれば、あらゆる問題や悩みは解決に向かうという知見を得ることができました。
また、ひとりで認知を変えることは難しいことも説明されているため、今までふわっとしていた、コーチングの役割や意義に対するイメージが明示されたような気がしています。
まとめ
この本を使いこなすことができれば、ほぼすべての問題を自力で解決することが可能となります。したがって、私にとって残念なことにコーチングはほとんど不要になります。問題解決大全…恐ろしい子!
希望があるとすれば、この本にたどり着ける人はそもそもコーチングを必要としない気がするのと、本書では扱っていない感情のフォローがあるため、住み分けることは可能だと考えています。また、本を読んだり、ひとりで考えるのが面倒な方はコーチングを受けて頂ければと思います。
仕事で成果を出したい方はもちろんのこと、問題や悩みを自力で解決したい方や、コーチングの精度を高めたい方にも、ぜひ読んで頂きたい一冊です。
本書と対をなす「アイデア大全」も役に立つのでぜひ読んでみてください。
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