議論や対話を行う人すべてに読んでほしい、ヴォルテール「寛容論」

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アイコンになっているヴォル子さんの元ネタのヴォルテールが何を論じていた人か(プロフィールに軽く書いてあるけど)興味があったので、Kindle Unlimitedにあった「寛容論」を読んでみました。

18世紀後半のフランスで起きた「カラス事件」を発端として、著者のヴォルテールがキリスト教における不寛容を糾弾し、寛容の精神を説く内容です。

カラス事件(カラスじけん)とは? 意味や使い方 - コトバンク
改訂新版 世界大百科事典 - カラス事件の用語解説 - フランスでおきた異端迫害の冤罪事件。1762年3月9日,トゥールーズ高等法院は,同市フィラチエ街の衣料店主カラスJean Calas(1698-1762)に死刑を宣告した。プロテスタン...

上のコトバンクから、世界大百科事典 第2版「カラス事件」の解説を引用します。

カラスじけん【カラス事件 L’affaire Calas】
フランスでおきた異端迫害の冤罪事件。1762年3月9日,トゥールーズ高等法院は,同市フィラチエ街の衣料店主カラスJean Calas(1698‐1762)に死刑を宣告した。プロテスタントの彼が,カトリックに改宗しようとした長男マルクを絞殺した(1761年10月13日夜)というのである。62年2月19日にはプロテスタント牧師ロシェット,グルニエ3兄弟が処刑されている。カトリック側の不寛容の狂信による迫害である。

カラス事件の経緯から始まり、聖書や聖人、神学者の事例を元に寛容だった例を挙げ、当時趨勢を極めていたカトリック教会や一部の狂信的なキリスト教徒たちがどれだけ不寛容だったかも歴史上の事件や書簡などの実例を示して批判していて、これからは寛容になろうと説いています。

実際に行われた迫害や弾圧がかなりひどいもので、まさに血を血で洗う惨劇そのものでした。現在我々が知っているキリスト教のイメージからはかけ離れていて、十字軍の遠征などで軽く知ってはいたものの、本書に挙げられている内容は想像以上の悲惨さでした。特に第17章の「聖堂参事会員からイエズス会士ル・テリエへの手紙、一七一四年五月六日付」の内容が本当に狂っていて、ここだけでも読むと弾圧や迫害を行う側のヤバさが実感できると思います。

また、本書はキリスト教について書かれていますが、キリスト教を他の主義主張・価値観・信念信条に置き換えても成立する内容で、フェミニズムとかヴィーガニズム、果ては近年流行りのSDGsにも適用しうるものとなっています。私が申し添えたいのは、近年Twitterに跋扈している、フェミニストを標榜しているのに規制などによって他者の権利は収奪して良いと考える方々にぜひご一読頂きたいということです。まあ多様性を重んじて寛容なフェミニストの皆さんは、これくらい当然履修していますよね。

この内容がフランス革命の20数年前に出版されていることも興味深いですね。王制と教会の腐敗が積もりに積もって民衆に不満が溜まり、革命が起こる一歩手前まで来ていることが伺えます。今の日本の政治と経済の馴れ合いによって、全然景気が良くならないことで我々の不満が溜まっている状況にも似ているような気がするので、何らかの形で革命のような出来事が起こる可能性がなきにしもあらずといった感じがします。

寛容と言いつつも言説はかなり痛烈なので、殴るなら暴力や弾圧など人権を侵害する方法(規制含む)じゃなくて論理で殴れってことでしょうね。現在の議論における基本スタンスを提示したとも言える本なので、議論や対話を行う方や多様性や寛容とは何かを考えたい方にはご一読をオススメします。

【宣伝】Kindle Unlimitedの特典になっているので、入会すれば無料で読むことができます。

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